フィット加工

当社製ドライブギアは、フィラメントが当たる部分のカーブを強くすることで、
従来品よりフィラメントの接触面が多くなる作りとなっています。

 カーブが緩い場合、ギアの刃がフィラメントに当たる面積は少ないため、十分にモーターの力がフィラメントに伝わらず結果スリップし易くなります。しかし、このカーブがフィラメントに近い場合、当然ながらギアの刃がフィラメントを包むように当たるため、モーターの力がダイレクトに伝わりやすくなります。

 大まかな製作手順としましては、まずカーブの形状を決めます。フィラメントに多く接触してもらいたいので、フィラメントを測定し理想的なカーブを計算します。もちろんフィラメントに多く当たる方が良いのですが、半分程包み込んでしまうと3Dプリンターの構造との兼ね合いでセッティング出来ないことが分かりましたので、バランスを取りながらカーブを決定しました。

 次に、”ピッチ”という刃と刃との間の距離を決めます。例えば、当社製作のドライブギアのピッチは0.5と0.7ですが、これは刃と刃の間の距離が0.5mmもしくは0.7mm間隔で一周刃が立っているという意味です。しかし、ピッチを決めれば自動的にきれいな刃が出来るわけではありません。この状態で刃切りを行うと、一周回った時には最初の刃と最後の刃がズレてしまい、いびつなギアが出来上がってしまいます。一周回って最初と最後の刃の繋ぎ目がピッタリにするため、刃の深さ・高さ・幅などの点を計算し、何度もトライ&エラーを繰り返した結果「フィット加工」が実現しました。

一刃一刃を美しく

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フィット加工に加え、ギアが一周回転した際に
すべての刃が鋭角で同じ寸法
になるよう仕上げております。

 刃の鋭利さを決めるのは、ギアを切削する刃物の深さ、それにカーブの角度も関係してきます。これらの数値はある程度計算で出すことは可能ですが、その数値通り行ってもきれいに削れない場合が多くあります。刃がガタガタになったり、真ん中は鋭利に立つが端は太く残ってしまう、という場合もあります。

 それゆえ、刃の深さを変更しカーブの角度は固定、または刃の深さは固定しカーブの角度は変更、その両方を変更するなどして、あらゆるパターンを試しました。さらには様々な材質を試し、当社の中で最も鋭くも美しい刃の形状を加工することに到達しました。

2パターンのギア

フィラメントの性質によって歯を使い分ける2種類のギアを製作しました。

 こうして出来上がったドライブギアを3Dプリンターに実際に取り付け、性能実験を行いました。10種類を越えるフィラメント・出力スピードの変化・温度変化などを3Dプリンターに与えて、従来のドライブギアとの比較を行いました。その結果、もちろん従来より格段に食いつきが良くなり、スリップは大幅に改善されました。しかし造形品質には大きく問題はありませんが、フィラメントに付いた跡を検査した所、材質によっては食い込み過ぎてしまっていることも観察されました。0.5㎜間隔でノズル方向へどんどん送られていく訳ですから、ノズルの出力に多少なりとも影響が出るのではと考え、少し刃と刃の間隔を広く持たせたピッチ0.7㎜も製作しました。フレキシブルフィラメントなど柔らかいフィラメントに対しては、こちらのほうがノズル詰まりに関して若干の安定性を感じました。

 これは【こだわり】の話で、ステッピングモーターのトルクを最大限引き出すためにあえて製作したものです。はっきり言ってしまえばどちらのギアでも大きな違いはありません。3Dプリンターのドライブギアからノズルまでの距離・フィラメントの材質が変化しても、基本的にはピッチ0.5㎜でも0.7㎜でも使用は可能です。しかし、各プリンター・各フィラメントに最も適したドライブギアをお探しの方がいらっしゃればという願いから製作しました。

一部の3Dプリンターメーカー様でも純正部品・オプションパーツとして採用いただいており、効果についてはお墨付きです。